5. 旅人さんのいい話

5.1. 年末年始の過ごし方

5.2. 旅の人と出会う


5.1. 年末年始の過ごし方

ナミビアに移住して3ヶ月がたって、学校の年度が終わり、夏休みに入った。学校系隊員特有ではあるのだが、学校の休みのあわせて隊員も休み、というか、フリーな期間になる。夏休みは1ヵ月半ほどであった。


せっかくなので、と思って、久しぶりに一人で少し国内をめぐることにした。めぐるといっても、首都に少しと、それから南の観光地Swakopmundにいって、年越しをしよう、というくらいのこと。

結局、首都に数日滞在し、南部Swakopmundへいき、Walbisbayで年越しをして、また首都に戻り、omuthiyaに戻って、そのあとカズのいる北部Ruacanaに行く、という夏休みを過ごした。


首都ではカメレオンバックパッカーズという、ナミビアではもっとも有名なバックパッカーに一週間ほど宿泊。何人かの日本人と会った。みんな、かなりの旅行歴を持つ人たちだった。

クリスマスはイギリス人の家でターキーをいただいた。町はゴーストタウンのごとく、誰も外にいなくなった。



Swakopmundではドイツ人と同室になり、夕食をともに。ここはナミビアの白人の集まる観光地であり、首都と違わぬ水準の街並みを誇る。観光地であり、かつナミブ砂漠に面しているため、砂漠アクティビティが充実しているのがここ。このときは、サンドボード(砂漠のスノボ)、それから砂漠ドライブツアーといって、砂漠をジープで走るガイドツアーに参加した。ドライブ自体、丘陵を走ったりするアトラクション的になっていて、かつ、砂漠の動物を見つけては、ガイドしてくれる、というツアー。



カメレオンの変色

砂漠ドライブ


砂漠ドライブ

 

そこからWalbisbayへ。日本のマグロ漁船も停泊するという港湾都市である。SwakopmundとWalbisbayのあいだにLongbeachという小さな町があり、そこはブラッドピットとアンジェリーナジョリーが出産のために滞在したというリゾート地。そのLongbeachでカウントダウンのイベントがあるということで、それに参加した。

Walbisbayからタクシーで現地へ、芝生にステージがあり、いくつかのライブイベントが開かれていた。カウントダウンで花火があがったのは覚えているのだが、そのあたりで現地の人からご馳走になったショットで、途中から完全につぶれていた。

帰りは国道を歩いて帰きながら、途中でヒッチハイクに成功。軽トラックの荷台に寝転がり、空を見ると満天の星空。そんな年越しを過ごした。

 

 



5.2. 旅の人と出会う

首都のカメレオンバックパッカーズに滞在中に出会った日本人旅人がいた。タイに数年いて、そこでオーストラリア人と結婚し、旅をしてナミビアについた、と。世界中のクラブを回っていて、ケープタウンのクラブの音質についてべた褒めしていたのが印象的。床から響く音に揺られて、疲れたら外に出るといい風がふいてきて、と。


そんな話をしながら。私のドミにいる子たちが、どうやら大学生で地質学を学んでいるとのことで、部屋に入ったら石がたくさん並んでいて、、という話になった。そのとき、彼は「石はすべてを語るよ」と言っていて、なんだか響いた。


彼に、「なんで青年海外協力隊になったの?」と聞かれたのが、この夏休みのハイライト。


この2年間の目的として、「ギブミー1ダラー」の答えを探して、というのがあるのだが。この答えの輪郭は、この夏休み、このときの出会いでわかった気がした。


ちょうど、omuthiyaの町で、「1ダラー」って言われて、断ったら笑って通り過ぎていった、ということがあったばかり。こっちは一言一言まじめに考えてしまうのに、そんなに軽いもんなのか、と、ちょっとがっかりしたところだった。


彼に言われたのは、「あげたいときはあげたらいいし、あげたくないときはあげなければいい。ルールを決める必要なんてない」。


そうだな、と思った。

たぶん、ルールを決めるのは、思考停止して楽になりたいからなわけで、たぶんだけど、私の場合は、毎回その場で判断すべきなんだな、と。自分の気持ちに従えばいいんだなあ、と。


おそらく、彼はそんなに大きな意味で言ったつもりではないと思うのだけど。私にとっては結構大きな衝撃だった。


さらに、畳み掛けるように、協力隊の先輩にも同じ話をした。

彼女の話も衝撃的。

「1ダラーって言う子にはあげるようにしてる」と。


「そういう子は愛に飢えている、と。私が1ドルあげることで、自分のことを愛してくれる人が、自分のことを気にかけてる人がいるってことを認識してもらうことは、大切なこと。」


といっていた。

これも、旅人さんの話と同様に、大きな衝撃を受けた。


まだナミビア滞在3ヶ月だったけど、面白い人たちの面白い話のおかげで、残りの期間に向けて、出国時とは少し違った感覚で臨めるようになった。


そして思った。

よく、日本は物質的には豊かだけど、精神的にはプアだ、と。逆に途上国の子供は本当にいい笑顔をする、と。

そんなきれいごと言ってても、途上国のそのいい笑顔の子は、その物質的な貧困が原因で明日死んでしまうかもしれない。それをきちんと自分の中に入れておくことは、大切だと。